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CMA CGM JAPAN(株)代表取締役社長によるRCAPS Onigiri セミナー開催、恵谷洋氏へのインタビュー

研究

2019/02/05

2018年12月19日(水)、CMA CGM JAPAN株式会社の代表取締役社長である恵谷洋氏をお招きし、「サプライチェーン・ロジスティクスのトレンド-現状と今後」と題して、立命館アジア太平洋研究センター(RCAPS*)セミナーを実施しました。

恵谷洋氏ヘのインタビュー

- 本日のセミナーのテーマは「サプライチェーン・ロジスティクスのトレンド-現状と今後」でしたが、「サプライチェーン・ロジスティクス」とは何なのかわからない方が多いと思うので、簡単に説明していただけますか。

サプライチェーン・ロジスティクスは、「サプライチェーン」と「ロジスティクス」の2つの要素からなります。サプライチェーンとは、製品が消費者に届くまでの広範囲のプロセスや活動であり、研究開発と企画、そして調達、製造、販売や、消費者に届くまでの流通がこれにあたります。消費者が製品を受け取った後の、補修、交換、リサイクルといった、製品のライフサイクルにおいて起こりうるプロセスも、サプライチェーンの一部と見なされています。ロジスティクスとは、物流と在庫を最適化し、商流の効果を最大化するためのマネジメントとオペレーションです。流通は、生産者と消費者の間のギャップを埋めるものです。ギャップには4つのものがあり、商流によって補われるのが所有と情報のギャップで、物流によって補われるのが空間と時間のギャップです。物流と商流は分離されていますが、相互に深く結びついています。

- サプライチェーン・ロジスティクスについて予備知識がない人にとって、恵谷さんの説明はとても役立つと思います。サプライチェーン・ロジスティクスの業界はどのように変遷していますか。

かつてのサプライチェーンは、今よりも小さく閉じていました。例えば、1つの国の中で製品を製造し、販売することができていました。しかしながら、今日のサプライチェーンはグローバル化によって国境をまたぐことが通常となっています。例えば、ある製品を米国で企画し、タイで部品調達、インドで製造、製品を欧州または日本で販売するなどですね。このような長いサプライチェーンは、無駄を生み出しやすくなります。グローバル化はサプライチェーン・ロジスティクスにとって重要なターニングポイントとなりましたが、1990年代からのネット化も大きなターニングポイントでした。インターネットが普及するまでのサプライチェーンは、店頭で終わりでした。従って、消費者の選択肢は限られていました。しかし、オンラインストアの出現により、消費者の選択肢は大きく拡がり、そこにはロングテール商品も含まれるようになりました。あるオンラインショップで商品を手に入れられなくても、消費者は他のオンラインショップで似通った商品をいつでも購入することができます。このように、グローバル化とネット化の影響を受けて、サプライチェーン・ロジスティクスは拡張すると共にし、複雑さを増し、多様化しています。

- 恵谷さんはキャリアを通じて世界の名だたる企業で仕事をしてきていらっしゃいますが、仕事で世界中を飛び回るというのはいかがですか。

私は、欧州に本社を置くグローバルロジスティクスインテグレーター2社とフランスに本社を置くグローバル海運企業、そして日本企業3社(総合商社、ITベンチャー、サプライチェーンソリューションプロバイダー)で働いてきましたが、そこで人と文化の多様性を享受することができました。世界各地を旅して、様々な国々に住みました。それは主として仕事のためですが、時には研究やNPO活動を目的とすることもありました。言うまでもないことですが、世界の様々な地域で旅をしたり住んだことは、とてもポジティブな経験となりました。

- 旅の中で、どの国での経験が一番思い出に残っていますか。

それぞれの国が異なる印象を与えてくれましたし、それぞれの経験を楽しむことができましたが、私が特に愛したのはインドネシアです。4年間インドネシアに住んであらゆる地域を訪ね、それぞれの文化について学びました。

- バハサ・インドネシア(インドネシア語)を話されますか。

はい、少しだけですが。

- インドネシアの食べ物はスパイシーなことで評判ですが、どう思われますか。

それは場合によります。インドネシアには250あまりの異なる民族がいて、それぞれの言語がありますが、どこを訪ねるかによって料理も変わってきます。スマトラではスパイシーな料理が一般的ですが、ジャワの料理はもっと甘めです。バリでは、イスラム教徒よりもヒンドゥー教徒が住民の大部分を占めるため、豚肉を使った料理が多いです。スラウェシやマルクのある地域では、米よりもサゴ(サゴヤシからとったでんぷん)が好まれています。

- 多くの人が興味深く感じられると思いますが、大学から旅立つ学生にとって最も重要なスキルとは何だとお考えですか。進学する際、その能力・適正をどのようにして習得することができるでしょうか。アドバイスをお願いします。

進学する学生の皆さんには、「グローカル」と「ホロニック」の概念を理解することが重要だと思います。グローバルな企業やNPOでのネットワーク組織の経営において、これらのコンセプトが近年非常に重要視されています。「グローカル」というのはグローバルなビジョンと戦略に基づきながらも、地域の環境に適応した形でローカルに活動していくことです。「ホロニック」とは、個が全体の一部であると同時に、全体も個の一部であり、個と全体が有機的に結びつきながら互いを活かし合うという概念です。
我々が生活し仕事をしている比較的グローバル化の進んだ世界において、文化的多様性のある環境下で働くことは政治的正当性も含んでいます。つまり、異なる文化的バックグランドを持つ人を批判することは今日否定される傾向にありますし、お互いの多様性を尊重することは基本的かつ重要なことです。しかしながら、政治・経済の世界において消滅しつつあるパクスアメリカーナの延長としてのアメリカ基準のグローバリズムではなく、人類が築いてきたグローバルな生態系的な共同体としてグローバル社会を捉えるならば、文化的相対主義の観点に立って差異をマネジメントしていくだけでは不十分でしょう。言語、宗教、文化の違いを超えた人類のコモンセンス(共通感覚)を認識することや、それを参照しながらグローバル社会の普遍的なプリンシプル(原理原則)を築いていくことが、これからのグローバルリーダーには求められるだろうと、私は思います。APUの学生が海外で勉強する際には、こうした考えや感覚を育まれることを願っています。

- 恵谷さん、本日はお時間をいただきありがとうございました。



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