報告:Inclusive Leadership amid COVID-19|立命館アジア太平洋大学

イベントレポート

報告:Inclusive Leadership amid COVID-19

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2020年5月28日、KIM Rebecca ChungHee教授とCILセンター(CIL)共同開催で、「Inclusive Leadership amid COVID-19」と題した講義が行われ、200名以上の学生が参加しました。

KIM教授から発表者への歓迎の言葉で始まり、ノッティンガム大学ビジネススクール(マレーシア)の研究部長Mohan V Avvari教授、CILセンター長ALCANTARA Lailani L.教授、CIL研究メンバーACKARADEJRUANGSRI Pajaree准教授が発表されました。

ALCANTARA教授は、危機的状況下における(※1)従業員エンゲージメントの必要性とその維持について、インクルーシブ・リーダーシップを通して人間の基本的な欲求に対処する重要性について取り上げました。

リーダーとして明確な方向性を示すことを期待され、同時に「不明確な道筋」があることを認めなければならず、そして力強く振る舞う一方で弱さを示さなければならないという、危機に直面しつつも対処しなければならない緊張についても触れました。

その後、ALCANTARA教授はパンデミックが帰属意識や固有の価値というインクルージョンの2つの基本的な面へのどのように問題をもたらしているのかについて示し、職場における社会的つながりを混乱させている状況的問題や、従業員のニーズに対するリーダーの反応を制限し、また偏らせている認知的な問題についても話されました。

最終的に「リーダーは何ができるか?」について、人々を信じること、小さな「勝利」を積み重ね、「普通」という基準を再考し、この厳しい状況でインクルージョンへ導くための帰属意識と固有の価値を育てるという具体的な提案を行いました。

(※1)従業員エンゲージメント:従業員の仕事への関与や満足、および仕事への熱意(Harter et al., 2002)

Avvari教授は、Alcantara教授が取り上げたように危機的状況下でのエンゲージメントの必要性を認識しつつ、マレーシアの若いビジネスリーダーたちがどのようにして彼らビジネス関係者のエンゲージメントを通じて成長しているかという実例を引用されました。

マレーシアの食品飲料業界の中小企業であるMBL(myBurgerLab)のケースでは、Mohan V Avvari教授が注目された点として、MBLはリソースの限られたまだ歴史の浅い会社であるにも関わらず、スタッフ顧客、取引業者、地域、政府、ビジネス団体を含めたすべての関係者とのコミュニケーションとエンゲージメントを効果的に行っています。関係者のエンゲージメントには、SNSに独自の内容をあげる、顧客とタイムリーな交流を行う、競合他社とコラボレーションをする、透明性と責任性のあるマネージメントを行うといった様々な方法やツールを使っています。Mohan V Avvari教授は参加の学生たちに向けて、若者の能力に対する信念をメッセージとして送り、前向きに生き、積極的に社会の改善に貢献すべく行動するようにと励ましプレゼンを終えました。

Ackaradejruangsri准教授は、コロナパンデミックという現状を反映する(※2)VUCA(ブーカ)という概念を見直すことによって「パンデミック時にインクルーシブ・リーダーはどのように行動するか?」と題し発表を行いました。コロナウイルスはリーダーたちに「リーダーシップテスト」を課し、テストに合格するには正しい考え方でインクルーシブな方法を用いて、迅速かつ正直に反復的に行動することが求められると述べています。

この危機的状況において世界の様々な地域のインクルーシブ・リーダーたちはどのように行動しているかの具体例も挙げました。ニュージーランドのJacinda Ardern首相の初期段階でのコロナに対する積極的な方法は、インクルーシブ・リーダーたちがどのように人々の安全を優先し「現実の危機に襲われる前に先に行動する」ことができるかを示しました。

また、Airbnbの共同創設者でCEOのBrian Cheskyのタイミング良く、ひたむきで透明性の高いコミュニケーションはリーダーたちの危機に対する責任感の強さを立証しました。発表の後半では、ACKARADEJRUANGSRI准教授は、パンデミックのような厳しい状況をしっかり進むための考え方や行動について、現在進行中のインクルーシブ・リーダーシップに関する研究プロジェクトを進める中で得たタイの若いインクルーシブ・リーダーたちの声を紹介しました。インクルーシブ・リーダーシップは、実際の地位や職位ではなく、むしろ正しい考え方をもったインクルーシブな行動についてであると述べました。

(※2)VUCA(ブーカ):Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)

3名の先生たちのプレゼン終了後、KIM教授の司会でQ&Aセッションとなりました。プレゼンの最中にコメントや質問を送ることができたので、Q&Aセッションではより客観的で論理的な意見やするどい質問がでました。それぞれの発表者が質問に対して時間をとって対応し、コロナ危機下におけるインクルーシブ・リーダーシップについての理解を深めることができました。