学長ノート

学生ってなんだ?

2014/10/31

今村 正治 元副学長

いきなりですが、「患者学」というのがあるんですね。

「システムが変わるには時間がかかるし、目の前にいる医療従事者を変えるというのもむずかしい。ところが、自分が行動を変えるのは簡単です。今この瞬間からできることです。医療の質を上げ、あなたが満足するために、ほかでもないあなた自身が今日から変わればいいのです。日本の医療改革のスピードを速めることができるのは、患者さんだけではないか」と『最高の医療を受けるための患者学』の中で、著者の上野直人さんは述べています。

日本の医療現場では、治療方針や薬の処方について患者に十分な説明をしない医師、自分の治療を正しく理解しないまま医師にすべてを委ねる患者、という関係が見られます。「患者学」というのは、患者と医師と治療に関係する医療スタッフが、積極的にコミュニケーションをはかりながら共に病気を治していくという参加型医療、チーム医療をめざすために、患者自身が学ぶことでこれまでの医療を変えようという考え方です。

なあるほど。だったら「学生学」もありかなと考えたのです。いや、なにも学生を患者扱いしているわけではないんですよ。そもそも学生は、大学にとって「お客さん」という存在ではない。ですから「学費払ってるんだから」と大学に「お客様」扱いを求めるのは間違いです。

まあそんな学生はAPUにはいないと思いますが。(笑)

学生はもっと素敵な存在です。

なんのために、なにを、どのように学ぶのかについて、先生や職員たちとともにチームになって、本気で考え行動する学生がたくさん増えれば、それだけで、APUの教育はグンと進化すると思います。学生自身が、自分たちはどういう存在か、どのように大学でふるまえば自分たちが成長するかを学ぶ、それが「学生学」になるのかもしれないのですね。

大学は、利潤を追い求める株式会社ではなく、非営利の経営体です。みんなが学んでいるコミュニティーです。学生も、教職員も、キャンパスで働いているすべての人も。そして、卒業生、市民、子供たち、キャンパスを訪れるあらゆる人が学ぶコミュニティーです。ただ、なんといっても、大学というコミュニティーの中で、一番たくさん学んでいる学生が主人公なんだと思います。大学の起源は、その昔のヨーロッパ、学生のギルド(組合)と教員のギルド(組合)の連合体から始まったといわれています。学生と教員は、大学をつくっていく対等なパートナーだったということを忘れてはならないと思います。

いろいろ書いてきましたが、要するに、学生が変われば、APUはもっと良くなる、ということです。学生につられて、みんなもハッスルしますからね。ハッスルって、言葉、古いかな。

『最高の医療を受けるための患者学』上野直人(講談社+α新書)



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