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上野千鶴子氏が「日本社会とジェンダー」について講演。「第2の開学」記念講演会

講演・シンポジウム|来学者|SDGs

2023/07/21

2023年7月3日(月)、APU「第2の開学」記念イベントとして、社会学者であり、東京大学名誉教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長の上野千鶴子氏をお迎えし、「日本社会とジェンダー」をテーマとした講演会を開催しました。ダイバーシティ&インクルージョンの推進を掲げるAPUでは、多くの学生が「誰もが生きやすい社会の実現」を目指して学んでいます。ジェンダー研究の第一人者である上野氏の講演には、定員の200名を超える学生・教職員・一般市民からの応募があり、関心の高さが伺えました。

講演会冒頭では、日本の女性の地位が低い状況が、男女間賃金格差や女性管理職比率、非正規雇用率等の数値によって示され、これらの改善は、時代遅れの税制と社会保障制度によって阻まれているという事実が浮き彫りにされました。また、上野氏は日本の大企業は「差別型企業」が多い一方で、ベンチャー企業などには男女の活躍が均等になるよう配慮した「平等型企業」が多くあるという研究結果を紹介し、男女賃金格差が小さい企業ほど売上げ高経常利益率が高いことが立証されているにも関わらず、日本型企業では現状の組織文化を変えたくないという動機から、社内改革がなかなか進まないという根深い問題を指摘しました。そのうえで、上野氏は日本の少子化について触れ、出生率とは、未来の社会に希望が持てるかという、生殖年齢にある若い男女の行動の集積であるとし、低出生率は社会に希望を持てないという国の証であり、日本社会が作り出してきた一種の人災であると言及しました。

質疑応答では多くの学生が挙手し、現状を憂う学生の声に対して上野氏は、「変化は徐々にではあるが、起きている。男女賃金格差は縮小しつつあり、女性が意思決定できるポジションに就くことが多くなった。メディアの担い手に女性が増え、発信される情報が変化した。変化を起こしてきた女性が現にいる」と応じました。また、弱者である女性は、社会にどのような希望を持つべきかという問いかけには、「フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想。男性は女性になる可能性があまりないので平気で差別をする。しかし、どんな強者も必ず老いる。人は必ず最後は弱者になる。高齢化社会で良いことがあるとすれば、自分が弱者になることを想像せずにはいられない社会になるということ。」と強者が弱者に理解を示す社会の到来を示唆し、励ましました。

最後に上野氏は、「こんな世の中を皆さんに手渡さなければいけないことになって、本当に申し訳ないと思います。でも徐々にではあれ、しだいに変わってきました。社会の根幹に切り込むには非力だったけれど、前の世代の女性たちの意思を受け継いで、いくらかは変化を起こしてきました。その変化が、次の世代の皆さんにも引き継がれて、そして皆さんがこの社会を更に次の世代に引き渡すときには、少しでもよりよい社会にしていただくことを、心から期待しています。」と力強いメッセージを参加者に送りました。



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